法華経 髻中明珠の譬え

法華経　髻中明珠（けいちゅうみょうしゅ）の譬え

　多くの世界においてこの法門の説かれる声、あるいは名前を聞くことは得難いのである。
それは、あたかも軍隊を統率する転輪王がいて、武力によって自分の王国を征服するかのようなものである。敵の王たちが、その転輪王と戦闘状態に陥り、転輪王の戦士たちはそれらの敵と戦うことになるのだ。
　その転輪王は、戦士たちが戦っているのを見て満足し、満足するや否や、喜んで、それらの戦士たちに種々の恩賞、すなわち、村や、町、衣服や、手と足の飾り、首飾り、耳飾り、黄金の糸、真珠の首飾り、金貨、黄金、宝石、象や、馬、戦車、歩兵、召使いでさえも、乗り物や輿も与える。けれども、決して髻の中の宝石を与えることはない。それは、髻の中の宝石がたった１つしかないからだ。
　しかしながら、マンジュシリーよ、王がその髻の中の宝石でさえも与える時、王のその〔歩兵・騎兵・象軍・戦車の〕四種の兵より成る軍隊はすべて、不思議で驚くべき思いを抱くのだ。

サンスクリット版短縮訳　法華経現代語訳　植木雅俊「訳・解説」　角川ソフィア文庫より引用