法華経 衣裏繋珠の譬え
それは、誰かある男が、友人の家に行って、(酒食を御馳走になり)酒に酔うか、あるいは眠り込んでしまって、その友人が、『この宝石が、この男のためになるように』と考えて、値段もつけられないほど高価な宝石を衣服の縁に結びつけるようなものです。
その男は(眠りから覚めて、)立ち上がって旅立ちました。他の国に到り、そこで大変な苦労をして辛うじて食べ物を得て、それに満足し、喜んでいます。その後、宝石を結び付けたその旧友が、その男を再び見て、その男に言いました。
『あなたは、なぜ食べ物や着る物を苦労して求めているのか? あなたが幸福を享受できるように、あらゆる願望を実現できるだけの高価な宝石をあなたの衣服の縁に結び付けておいたのに・・・。私は、あなたにその宝石を与えていたのだ。あなたは、<何が結び付けられているのか? 誰が結び付けたのか? 理由は何なのか? いかなる動機でこれは結び付けられたのか?>と、調べることもなかった。苦労して得たもので満足しているあなたは愚かである。あなたは、この宝石を持って町へ行き、お金と交換しなさい。そのお金でなすべきことのすべてをなしなさい。』
法華経 角川ソフィア文庫、植木 雅俊「訳・解説」 より引用
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