無用の用(『荘子』の山木篇)<5次元時代の賢い生き方> 荘子より引用
ある時、荘子が 弟子の一人と旅に出て、山道で 枝葉のこんもりと繁った
大木を 見掛けたが、付近にいる木樵も、この大木には 手をつけようとし
ない。わけを聞くと、「この木は役立たずだからほったらかしてある」
という答え。そこで荘子は 弟子向かって、
「ほれ ご覧、この木は役に立たぬお陰で、自分の天寿を全うす
ることが出来るんだよ。」
と教えた。ところが その晩、知り合いの家に泊まると、そこの主人は
大喜びで、飼ってある雁を潰して御馳走をしてくれたが、その時には
二羽の雁のうち、良く鳴くのと鳴かぬのと、鳴かぬのは役立たずというわ
けで、その方が潰されてしまった。弟子は戸惑って、
「さあ判りません。こうなると役に立つのと、立たぬのと先生
は一体どっちをおとりになるわけですか。」
と訊(たず)ねる。荘子は にっこり笑いながら答える。
「そうさな。わしなら 役に立つ と 立たぬ の中程にでも いるとし
ようか。もっとも それもまだ 本当に“道”に遊ぶと言うには
足りんから、ちと 累(るい)が残る。本当に“道”に遊ぶと言うのはだな、
誉(ほ)められもせず、謗(そし)られもせず、その時々に 順応して
些(いささ)かの さかしらも弄(ろう)さぬこと。浮くも 沈むも ままにして
人と争わず、“道”のままに 身をまかせ、物を制しても 物に制せられぬ
ことだ。そうすれば何の累(るい)も残ろうハズが ないじゃないか。」
累 ルイ
かさねる、わずらわす、しきりに
弄 ロウ
もてあそぶ
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